虫歯の神経の治療とは、細菌が感染してしまい残すことができなくなった歯の神経を取る治療のことです。
その治療のことを抜髄(ばつずい)と言います。
今、あなたは「神経の治療とはどんな治療だろう?」と不安に思われているのではないでしょうか?
もしくは、歯医者で抜髄治療を勧められて「痛みや、回数、費用」について疑問を持っているのではないでしょうか?
この記事を読むことで、今、あなたの抱えている疑問や不安が解消されます。
なぜなら、実は私たち歯科医療従事者は毎日のように患者様の疑問にお答えしています。
患者様がどのようなことを不安に思われるか?を経験から知っています。
そこで今回は、その内容をイラストなどを用いて、よりわかりやすく記事を書きました。
記事を最後まで読んでいただき、抜髄治療の真実について知って頂ければと思います。
目次
1 虫歯の神経の治療とは?
虫歯の神経の治療は、抜髄(ばつずい)治療と呼ばれており、歯の神経を除去する治療です。
しかし、「歯の神経を除去する治療する」という理由がわかりにくかったり、
治療イメージがしにくいと思います。
この章では、抜髄治療の概要とメリット、デメリットについてまとめます。
1-1 虫歯になった人が行う神経の治療を”抜髄(ばつずい)”と言う
虫歯の重症度は、C1~C4まで分類されますが、上図のC3以上の重症度で「抜髄治療」が必要となります。
このC3とは、虫歯が非常に大きく、歯の神経にまで到達している状態です。
この状態に加えて、
- 何もしなくてもズキズキ痛む場合
- 過去に、ズキスキした痛みのがある場合
- 神経が死んでしまっている場合
に対して、抜髄治療が必要となります。
1-2 抜髄とは神経を取り除く治療
この抜髄治療には、メリットとデメリットが存在します。
メリット
・ズキズキした痛みを取り除くことができること→これが最大のメリットになります。
・細菌感染してしまった神経が痛む前に除去できること→ある日、激痛が訪れることを事前に防ぐことができます。
の2点です。
デメリットは、
・抜髄治療をした歯は割れやすくなる
→割れ方次第では、将来的に抜歯になる可能性がある
・虫歯の発見が遅れやすくなる
→神経が無いので、虫歯が進行しても「痛み」や「しみる」などの自覚症状が出ないので、
発見が遅れやすくなる。
・将来的に根の先に病気ができて、再治療が必要になることもある。
→最初の抜髄治療の質が悪いと、細菌が多く残ったままになり、
根の先に病気が出来ることがある。
2 歯の神経治療(抜髄)が必要な状態・症状
実は、歯の神経の治療が必要かどうか?は、虫歯の大きさのみで決まるのではありません。
以下の状態に当てはまる場合は、抜髄治療が必要となる可能性が高くなります。
・心臓のドキドキと同じようなリズムで、ズキズキと強く痛む場合。
・痛みが非常に強く、上の歯が痛いのか、下の歯が痛いのか区別が難しくなる。
・ズキズキ痛むはで、食べ物を噛むと激痛が走り噛めない。
・お風呂に入った時、お酒を飲んだ時に痛みが強くなる。
・運動したり、階段の昇り降りで痛みが強くなる。
・痛み止めを飲んだ後は痛みが落ち着くが、時間が経つと痛み出す。
そして、何度も痛みどめを飲む状況になっている。
上記の症状がある場合は、歯の神経の治療が必要になる可能性が高くなります。
緊急性も高い状態なので、なるべく早くに歯医者を受診することをオススメします。
5分程度の動画です。ぜひご覧ください。
3 歯の神経治療(抜髄)の方法・流れ
①麻酔
表面麻酔を効かせた後に、局所麻酔を行います。
治療前からズキズキと強い痛みがある場合は、痛み止めを飲んでいただき、
痛みが落ち着いてから局所麻酔を行います。
②抜髄治療を始める前の準備
必要な場合は、歯を補強(隔壁:かくへき)を行ってから、ラバーダムを装着します。
ラバーダムは、唾液に混じった細菌が根管内に入り込むことを防ぐので、抜髄治療には欠かせません。
万が一、ラバーダムを使用せずに治療し、根管内に細菌が唾液から入り込んでしまうと、
その細菌が歯の根っこの中で繁殖します。
そして、治療終了したにも関わらず、根の病気が再発してしまい、再治療が必要となることがあります。
③歯の根っこの掃除・殺菌消毒
虫歯を完璧に除去してから、細菌感染している歯の神経を取り除き、
専用の治療器具(ファイル)で歯の根を掃除します。
歯の根の掃除がおわりキレイになった後に、強力な液体洗浄剤で根の中を洗うことで、
根っこの内部をしっかりと殺菌消毒を行います。
④根管充填
この処置を、根管充填(こんかんじゅうてん)と言います。
しっかりと、根管充填されていないと将来的に、隙間に細菌が繁殖して再治療が必要になることがあります。
⑤土台を作る
歯の根の治療が終わったら、被せもののが入らられるように土台を作り補強します。
⑥被せ物を入れて噛めるようにする
土台が入ることで、やっと被せ物を入れて噛めるようになります。
4 抜髄した歯はどうなる?
抜髄で歯の神経をとった後、「その歯はどうなるのか」について説明したいと思います。
抜髄した歯は、元々の自分の歯と比較して割れやすくなります。
特に力のかかる奥歯は、割れてしまうと抜歯になるリスクが高くなるので、
歯が割れるリスクを下げるためにも、上の図のような被せ物にします。
被せ物をせずに放置したり、樹脂や小さな金属で詰める治療を行なった場合は、
被せ物をした場合よりも6倍も歯が割れるリスクが上がります。
つまり、抜歯になるリスクが何倍も膨れ上がります。
ですので、抜髄治療で痛みが消えた!としても、そこで治療を中断してはいけません!
途中で治療をやめてしまった場合は、再治療が必要になります。
そうすると、歯に大きな負担がかかることで、歯の寿命が短くなります。
最後まで、治療に通うことが最も大切です!
Ng YL, Mann V, Gulabivala K. Tooth survival following non-surgical root canal treatment: a systematic review of the literature. Int Endod J 2010;43:171–89.
Fransson H, Dawson VS, Frisk F, et al. Survival of root-filled teeth in the Swedish adult population. J Endod 2016;42:216–20.
Ng YL, Mann V, Gulabivala K. A prospective study of the factors affecting outcomes of non-surgical root canal treatment: part 2: tooth survival. Int Endod J 2011;44:610–25.
“神経をとらない治療法=VPT治療”
そもそも、本当に「歯の神経の治療(抜髄治療)をする必要があるのでしょうか?
実は、抜髄をせずに神経を残す「VPT治療(歯髄温存療法)」と呼ばれる治療の出現により、欧米先進国では抜髄治療はあまり行われなくなっています。当院では欧米式の根管治療を採用しているので
当院においても数年前よりVPT治療を日々、行っています。
その結果、抜髄治療は急減しています。
例えば、「虫歯が大きく冷たい飲み物はしみるけれど、ズキズキした痛みがない場合」は、多くの場合は抜髄治療を回避して、神経を残した治療をすることが可能です。
しかしながら、歯科医師の知識と技術によって将来的な差が出やすい治療です。あまり経験がないにも関わらず、VPT治療を行う歯医者も増えつつあるので、VPT治療を受ける時には歯医者はしっかりと選ぶ必要があります。
アスヒカル歯科では、AAEアメリカ歯内療法学会専門医で、VPT治療の経験が豊富な
歯科医師が、処置を行いますので、安心してください。
神経を取らずに残すVPT治療について詳しく知りたい方は、以下のサイトにて解説動画を見ることが出来ます!
https://osaka-endodontic.or.jp/vpt.ph
5 神経の治療では必ず痛みがあるのか?
5-1 治療中の痛み
原則として、治療中に痛みはありません!
なぜなら、虫歯の神経の治療(抜髄治療)を行う場合には、必ず「麻酔(ますい)」を行います。
この麻酔がしっかりと効いてから治療を開始するので、治療中に痛みは出ません。
しかし、例外として痛むことがあります。それは、抜髄前に「ズキズキと強い痛み」がある場合です。
私見ですが、このような「ズキズキと強い痛み」のある患者様の多くは、麻酔が非常に効きにくい状態になります。なぜなら、歯の神経が一時的に変質してしまい、通常量の麻酔では効かなくなります。
元々、ズキズキと強い痛みがある歯は、痛みが無い場合と比較して約5倍の麻酔の量が必要とされています。
Renton T, et al. Sodium channel Nav1,8 immunoreactivity in painful human dental pulp. BMC Oral Health 2005, 5:5
Scholz, et al., J. Neurophysiol. 79: 1746-1754, 1998.
ただ、その量があまりに多くなると心臓などに負担がかかってしまいます。
よって、多くの歯科医院では通常の麻酔に加えて「歯の神経に直接的に麻酔をする髄腔内麻酔(ずいくうないますい)」を行うことがあります。
この麻酔は、ズキズキ痛い歯の神経に非常に良く効きますが、麻酔時に激痛を伴います。
アスヒカル歯科では、この「激痛を伴う髄腔内麻酔」をなるべく避けるために、事前に痛みどめを飲んでいただき、「伝達麻酔(でんたつますい)」と呼ばれる麻酔を行ったり、「骨内麻酔(こつないますい)」と呼ばれる骨の内部に麻酔を行います。
アスヒカル歯科根管治療専門サイト:https://osaka-endodontic.or.jp
5-2 治療後の痛み
結論からいうと、多くの場合は治療後の数日間は軽度の痛みが出ます。
なぜなら、虫歯の神経の治療で、神経を除去すると、その神経の表面に「傷」ができます。
この傷口の痛みが、抜髄後の痛みに繋がることが多くあります。
また、細菌に感染して神経は除去されているので、この傷口は自然と治っていきます。
ですので、抜髄治療後に痛みが出現しても心配はありあません。
手足の擦り傷が治るように、その神経の傷口が自然治癒することで痛みは治ります。
痛みの解消方法
全く痛みが出ない人、2〜3日で治る人、7日ほどで治る人など個人差がありますが、通常3日ほど様子をみて治ると言われています。
ほとんどの歯科医院では、抜髄治療後に鎮痛剤が処方されるので、痛む場合はその鎮痛剤を飲みましょう!
6 神経の治療の費用
結論から言うと「状況によって千差万別」です。
例えば、一本だけのひどい虫歯で根管治療にて治療した場合、根管治療の費用は
3割診療負担の方は、合計で4000円〜7000円程度と考えておけば大きく外れることはありません。
保険治療の被せ物と、自費治療の被せ物で費用が異なるのと同様に、保険治療の再根管治療と自費治療の根管治療の費用は異なります。
6-1 保険治療の再根管治療の場合
(*令和2年4月:保険診療10割負担の場合で計算)
・初診料 2400~2510円(医院の設備体制で変動)
・再診料(2回目以降) 440~510円(医院の設備体制で変動)
・感染根管処置 2300~5960円(歯の根の数で変動)
・根管貼薬 300~540円(歯の根の数で変動)
・根管充填 720~3300円(加圧の有無や、歯の根の数で変動)
・レントゲン料 380~4100円(レントゲンのサイズやデジタル化で変動)
保険診療は全国の歯科医院で同じ費用ですが、治療回数や設備(施設基準)などでやや変動します。
しかしながら、下の奥歯で顕微鏡を使用した場合は追加で1200円程度費用が増加します。歯周病の検査や治療、新しい土台や被せ物の費用は別途かかります。
アスヒカル歯科根管治療専門サイト:https://osaka-endodontic.or.jp
6-2 自費治療の初めての根管治療の場合
この場合、歯科医師が患者さんの歯の状態や、患者さんの希望、地域性などを考慮して自由に費用設定しているので、保険診療のように「全国ほぼ同じ」ではありません。
下図は参考までに当院の例となります。
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7 神経を取る治療の回数や期間について
下の図は、虫歯で神経の治療に必要な回数や期間についてまとめています。
1週間に1度の治療でで、1回の治療時間も30分で治療したものとして示しています。
歯の根っこの治療の期間は、治療の条件によって変わります。
その理由は、前歯と奥歯での根っこの数に違いがあるからです。
また、保険診療でこれ以上に期間が短い場合は、治療がきちんと行き届いていない可能性もあるぐらい、
根管治療は非常に複雑で時間がかかります。
アスヒカル歯科根管治療専門サイト:https://osaka-endodontic.or.jp
8 歯の神経を抜かないために日頃から重要になってくること
歯の神経の治療が必要になると、やはり不安な気持ちになりますよね。
この章では、抜髄治療にならない為に、日頃から重要なことを書きたいと思います。
8-1 虫歯にならないようにする
最も理想的な方法は「虫歯にならないようにする」ことです。
もちろん、しっかりと歯みがきをすることは大切です。
しかし、最も大切なことがあります。それは「食生活」です。
特に、甘い飲み物をチビチビ長時間に渡り飲むこと、寝る前に飲食をすることは虫歯の発生に直結します。
8-2 虫歯を早期発見し、早期治療する
どんなに気を付けていても、生まれつきの唾液や歯の性質で虫歯になりやすい方もいらっしゃいます。
ですので、定期検診に通院し「虫歯が出来ても、小さい虫歯のうちに発見して治療する」ことで、神経の治療を回避することができます。「痛くなってから歯医者にいく」という方は、神経の治療が必要になる可能性が高くなります。歯医者に定期検診に通う方は、近年、非常に増加しています。
定期検診の経験がない方は、是非、お近くの歯医者にて検診をしてもらいましょう。
アスヒカル歯科では、全ての虫歯を治し切った後に定期検診に入っていきます。
1年に1回、詳しい検査をすることで普通の定期検診に比べて虫歯の見落とす可能性が格段に少なくなります。
それにより、「神経の処置が必要」になるというシチュエーションになる可能性はグンッと低くなります。
アスヒカル歯科根管治療専門サイト:https://osaka-endodontic.or.jp
9 アスヒカル歯科での神経を取る治療について
①カウンセラーと予約や治療について相談できる
アスヒカル歯科では、カウンセラーによるお話のお時間をとることが可能です。
来られた患者様の予定や、希望の時間帯などをお話ししながら決めていくことができます。
ですので、1回で治療を終わらせてしまうことは難しいことが多いですが予定を相談できるので、
予定を作りやすくなります。
特にお仕事などで忙しい方にはオススメです!
②マイクロスコープ(顕微鏡)・CTでよりスムーズに治療を進められる
アスヒカル歯科では、「精度が高いCT」「精度の高いマイクロスコープ(カールツァイス社:プロエルゴ)」「動画説明機器(カリーナ社)」を取り入れながら歯の神経の治療を行なっています。
もちろん、マイクロスコープやCTなどの設備は重要なポイントですが、実は、「知識・技術」が伴っていなければ、ポテンシャルを引き出す事はできません。これらのハード(機材・機器)があるだけでは、あなたの歯に質の高い治療が出来る訳ではないのです。
例をあげるとすると「普通車運転免許を持っているからと言って、F1の車を運転できるのか?」
というが挙げられます。F1レーサーは特殊な知識と技術とチーム力で、最高のパフォーマンスを出すことができます。
やはり、「患者様に、少しでも質の高い抜髄治療を提供したい」という情熱と、修行が必要になります。
アスヒカル歯科の歯科医師は、AAEアメリカ歯内療法学会の専門医であり、豊富な知識と経験に加えて、これらの機材を使いこなすことで非常に質の高い抜髄治療を行なっています。
③アスヒカル歯科には根管治療専門医がいる
「歯の神経の治療技術」は、日々、進化しています。
10年前に、スマートフォンを多くの方が所持して使用するなんて予想していた方は少なかったと思います。
しかし、今や多くの人が当然の様にスマートフォンで情報を検索しています。
あなたもスマホで、この記事を読んでいるかもしれませんね。
歯の神経の治療においても、様々な常識がどんどん新しくなっていきます。
根管治療に用いる道具や薬剤も、どんどん進化し変化していきます。
その様なことからも、日本だけでなく海外の学会に積極的に参加し、海外の歯科医師と
知識技術交流をしながら、最先端の知識と技術を求めていくことが根管治療専門医の使命です。
アスヒカル歯科の歯科医師はAAEアメリカ歯内療法学会のスペシャリストメンバーで、
日々、あなたの歯を治すために研鑽しています。
2008 国立大学法人 北海道大学歯学部卒業
2009 名古屋大学病院歯科口腔外科 勤務
2011 大阪歯内の歯科医院にて勤務
2014 アスヒカル歯科 開院
2017 根管治療専門外来(根管治療大阪クリニック)開始
2018 医療法人湧光会 開設
<学会>
AAE(アメリカ歯内療法学会)Specialist menber
日本歯内療法学会
<研修>
DAA 根管治療イニシャルトリートメントセミナー
DAA 根管治療リトリートメントセミナー
DAA 根管治療超難症例克服セミナー
DAA 根管内破折器具除去セミナー
エンドサロン2018
石井宏歯内療法研修会
トロント大学歯内療法科1年プログラム
エンドサロン2019
Dr.Antonis Chaniotis 超湾曲根管治療セミナー
Dr.Jean-Yves Cochet 上顎洞領域外科的歯内療法セミナー
アメリカ歯内療法学会2020
エンドサロン2020
Dr安藤 顎顔面痛 セミナーbasic
Dr安藤 顎顔面痛 セミナーadvance
しっかりと相談して、治療を受けたい!と思われる方はぜひ、お問い合わせお待ちしております。
アスヒカル歯科根管治療専門サイト:https://osaka-endodontic.or.jp
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