進行した歯周病、再生療法で救えるかも。part2【大阪市都島区内の歯医者|アスヒカル歯科】
2020.04.01
アスヒカル歯科医院から歯科関連で役に立つ情報を定期的に皆様に提供させて頂いております。
今回も再生療法についてお話していきます。
さて、前回は歯周病の治療の中でも『歯周病の原因と初診から治療の流れ』からお話しました。
今回は『まず歯周病になると組織がどうなっていくのか』そのメカニズムをお話しますね!!
歯周病にかかってしまうと歯を支える組織はどうなるのか・・・
健康な状態の歯の周りの組織は歯と歯茎の隙間は浅く、あごの骨も失われていません。
しかし、歯周病がかなり進行してしまった状態の歯の周りの組織は、歯の根にプラークや歯石が大量についてしまい、深いポケットが出来てしまいます。
プラーク(歯垢)からは歯周病菌が出てきて、『酸』や『毒素』を作って歯を支える組織を破壊しながら、歯茎の表面にくっつき、体内に侵入していきます。
歯周病菌が体内に侵入してくると、感染から身を守るために『免疫反応』が起こり、歯茎が腫れたり血が出たりします。
人間の体はよく出来ていて『細菌の感染から体を守ることを優先』します。
その為に歯周病菌が体の奥深くに侵入して重篤な感染を起こさないように体が骨を溶かす物質やコラーゲン分解酵素を出し、自ら組織を破壊していきます。
これだけ聞くと、『どこが守っているんだ!』と思いますよね。
でもこれは先ほどもお話したように『細菌の感染から体を守ることを優先』する。要するに、『感染源から一定の距離を保つために安全な陣地を後退』させているのです。
その結果、あごの骨が溶けて無くなっていき、歯周ポケットが深くなっていきます。
『なるほど!じゃあ、あごの骨を再生させるのが歯周組織再生療法なのね!!』と思うかもしれませんが、それは『半分、正解』なのです。
なぜ!!!?
では説明していきますね。
歯を支えているのは『骨』だけではないのです。
歯の根とあごの骨の間には『歯根膜』という組織があり、これが歯の根の表面にある『セメント質』の助けを借りて、歯と骨を結び付けています。
『歯根膜とは?』
歯根膜の中には血管や神経が入り込んでいるので、歯や骨への栄養の通り道になるだけでなく、侵入してきた細菌への免疫反応を起こします。
また歯根膜は噛むときの力をクッションのように受け止めて力を分散させたり、神経や筋肉の反射によって歯を守ったり、噛む強さを感じるセンサー、咀嚼を助けるなどのはたらきもあるすごい組織なのです!
ですから、歯の寿命には歯根膜の存在が重要なのです。
再生療法は『あごの骨だけでなく、歯根膜と、またそれが歯の根に付着するのを助けるセメント質の再生』も目的としているのです。
さて、『まず歯周病になると組織がどうなっていくのか』のメカニズムについてお話しました。
次に、『歯周組織再生療法の治療の流れ』についてお話します!!
再生療法がどんなものなのか。
現在よく使われているジェル状の歯周組織再生材料『エムドゲイン®ゲル』を例に挙げてお話していきますね!
ちなみに同じようなジェル状の『リグロス®』も良く使われる材料なんですよ。
歯周組織再生療法には主にジェル状の再生材料を用いる方法や、お口の中の他の場所から採取した骨を移植する方法、人口の骨補填剤を用いる方法、薄い膜状の材料を用いる方法、そしてそれらを組み合わせて行う方法など、たくさんの選択肢があります。
今回は比較的シンプルな術式で行われるジェル状の再生材料『エムドゲイン®ゲル』を用いた方法をご紹介していきますね。
まず、重度の歯周病になっていた状態から第一回にお話した『TBI』や『歯石取り』で可能な限りプラークや歯石を取り除き、ある程度炎症が治まっている状態になって初めて『歯周組織再生療法』に進むことが出来ます。
麻酔をしっかりし、痛みをなくした状態で歯茎を切り開いてめくり、歯の根を露出させてから、外側から行う歯周病基本治療である『TBI』や『歯石取り』では取り除けなかったプラークや歯石を内側からも徹底的に取り除いていきます。
そして、綺麗になったところに材料が付着しやすいように工夫しながら処置し、エムドゲイン®ゲルを塗布していきます。
塗布をし終わると、歯茎を元に戻して縫合しますが、この時点で歯がグラグラと動いてしまう場合もあります。
そういった時には周囲の歯と固定します。
すると、歯茎とあごの骨の間のスペースには『血餅』が出来ます。
『血餅』は抜歯をした時、抜いたところの穴にも出来るんですよ。
この『血餅』とてもだいじなんです。血餅は蝶で言うさなぎのような物で、再生療法はこのさなぎを孵化させる、つまり『歯を支える組織に変化させる』ことが目的なんですよ!
歯根膜の細胞には様々な細胞に変化できる間葉系幹細胞があり、エムドゲイン®ゲルの作用で、歯の根に残っていた歯根膜の細胞が刺激されて、血餅が歯根膜をはじめ、セメント質やあごの骨に変化していきます。
すごいですね。
再生療法が上手くいったか治療の結果が分かるのは8~9か月後・・・
歯周病になる前に元通り!!
・・・とまではいきませんが、歯を支える組織が回復し、数年かけて成熟していきます。再生が上手くいかないこともあります・・・
血餅が流れてしまう事もあれば、血餅のスペースに歯根膜やあごの骨よりも早く歯茎が再生されてしまう事も・・・
そんな場合、歯茎は歯の表面にペタッと張り付いているだけなので歯を支える力は弱いのです。しかし、『エムドゲイン®ゲル』は歯茎が再生されてしまうのを抑制する作用もある、すごい再生材料なのです!
このように『歯周組織再生療法の治療の流れ』についてお話しました。
次は『再生療法の向き不向きと治療後の注意点』についてお伝えしようと思います!
再生療法とはあごの骨だけでなく、歯根膜と、またそれが歯の根に付着するのを助けるセメント質の再生を目的とした画期的な治療法ではありますが、どんなケースにでも向いているわけではありません。
歯周組織再生療法に一番向いているのは、『1本の歯の根をグルっと囲むようにあごの骨が失われている場合』です。
分かりやすく言うと、骨の欠損部分に水を注いでもこぼれない、器のような形で欠損している場合です。
こういった形で欠損していると血餅が保持されやすいので、再生もしやすくなります。
逆に水を注いでもこぼれてしまうような骨の欠損をしてしまっている場合は、血餅の保持が難しくなるために再生も困難になってしまいます。
・歯の根を囲むような骨の欠損ではない場合
・欠損の範囲が広い
・歯の根が複数ある歯で根っこの分岐部が見えてしまっている場合
このような困難な場合には、再生材料の塗布だけでは十分に再生できない可能性が高いのです。
骨をお口の中の別の場所から採取して移植したり・・・
人工骨補填剤を利用したり・・・
色々な方法で工夫しながら治療していきます!
そして、治療前後に気を付けて頂きたいこと!
・タバコはNGです!
たばこの煙に含まれるニコチンや一酸化炭素は、歯の周りの組織への栄養配給を妨げてしまいます。また、免疫の働きを狂わせたり、傷の治りも悪くさせるので再生療法の大敵と言えるんです。歯周病治療の効果も落ちてしまうため、喫煙をされている方は前もって禁煙をお願いします・・・
ちなみに加熱式タバコも同様です!
・治療後、処置をしたところで噛まないように!
再生療法を行ったところはとってもデリケートな状態です。周りの歯と固定していても噛む力が加わると再生中の組織が壊れてしまう事があるんです。
抜糸が終わって治癒するまでは、出来るだけそこで噛まないようにしましょう。
・治療した所の歯みがきはNG!
抜糸をするまでは治療した歯やその周りに歯ブラシを当てるのは絶対にNGです!
え?!歯みがきしないの?とびっくりですよね。
誤解しないでくださいね。
処置した所以外の場所はいつも通りしっかりとセルフケアを行ってください。
そして、処置した所は殺菌作用のあるうがい薬でケアしていきます。
アスヒカル歯科では『コンクールF』という洗口液を取り扱っておりますので、こちらを処方させて頂きます。
しかし、ブクブクと勢いよくうがいをしてしまうと痛みを伴ったり刺激になりますので、お口に含んで優しく行き渡らせるようにうがいをしてケアしましょう。
しかし、洗口液でのうがいだけでは歯みがきの代わりにはなりません。
ですので、3~4日に1回はご来院頂いて、プロのクリーニングを受けましょう。再生中の組織の刺激を与えないよう細心の注意を払って綺麗にプラークを除去していきます!治療から2週間で抜糸をするとそこからは1週間に1回ご来院頂いてクリーニング。そして、経過を診ながら徐々にご来院頂く間隔を伸ばしていき、約8~9カ月後治療結果の確認をしていきます。
さて、『再生療法の向き不向きと治療後の注意点』についてお話して参りました。
次は『メインテナンスの重要性』についてお話していきますね!
再生療法が上手くいった!もう大丈夫!
いいえ!!油断禁物です。
再生した後はメインテナンスが必須です!!
治療の結果が分かるまで8~9カ月と前回お話しましたが、『長い!!!』と思いますよね。
でも、もともとあった人体の構造を回復させる治療の為、どうしても時間がかかってしまいます・・・
そして、新しく作られたあごの骨が成熟するにはさらに2~3年と言われています。
歯を支える組織の再生を無事確認出来たら、治療を行った歯を長く持たせるためにメインテナンスに通い、プロフェッショナルケアを受けましょう。
治療を行ったところは、再生療法が必要なほど歯周病が進行してしまっていた場所です。治療を行ったからと言って、もう二度と歯周病にならないという訳ではありません。歯周病の再発を防ぐため、そして他の場所にも異変がないかを診る為、定期的な受診をしましょう。
『Axelesson P et al. J Clin Periodontol 2004;31:749-757』より
最初の歯周病の状態が悪くても、患者様の歯みがきがしっかりされていて、メインテナンスに欠かさず通って頂ければ、治療を受けた歯が30年持った。
という報告があります。
歯を支える組織だけが生まれ変わったのではないのでは?と思います。
長く大変な再生療法を乗り越えてこられた患者様は歯磨きのレベルも、お口の健康への意識も生まれ変わっていることと思います。治療が終わったからと言って、それで歯医者さんに通う習慣をやめてしまってはとっても勿体ないです。
アスヒカル歯科では、むし歯や歯周病の治療を終えられた多くの患者様が数カ月に1度のメインテナンスに欠かさずご来院頂いております。
患者様の体調やお口の状態に合わせて1~6カ月とそれぞれベストな間隔をご提案し、メインテナンスでプロフェッショナルケアと検診をさせて頂きます。
そして、数カ月~1年に1度の間隔でレントゲン検査をさせて頂き、悪い所が無いか・悪くなりそうなところはないかもしっかり診させて頂きます。
メインテナンスはただの『お掃除の日』ではありません。
患者様のお口の健康を少しでも長く維持し、また心配事を取り除くための大切な日なのです。メインテナンスに所要時間は患者様のお口の状態によって異なりますが、30分~1時間ほどです。
ご多忙の事と思いますが、どうか数カ月に1度、少しだけお時間を頂けませんでしょうか。そして、何でも構いません。
お口の事でお困りの事や疑問に思っている事なんでもご相談ください。
必要であればカウンセリングのお時間を設けさせて頂き、患者様が納得いくまでご説明、ご相談に乗らせて頂きます。
当院の待合室には、歯科関連の情報誌としてnicoを置いておりますので、待ち時間の合間に是非ご覧頂ければと思います。
何かご不明な点があればお気軽にスタッフまでご質問下さい。