歯科インプラントのメインテナンスの重要性【大阪市都島区内の歯医者|アスヒカル歯科】
2021.01.09
アスヒカル歯科医院から歯科関連で役に立つ情報を定期的に皆様に提供させて頂いております。
今回はインプラントのメインテナンスについてお話していきます。
とてもたいせつ!歯科インプラントのメインテナンス
失った歯に変わる選択肢の一つである歯科インプラント。
《良く噛める》《審美性が高い》と評判ではありますが、【グラグラする】【抜けてしまった】というトラブルも耳にしますよね。インプラントを失う原因には、インプラントに“歯周病”である『インプラント歯周炎』や過剰な噛む力が偏って負担がかかったことによりインプラントが脱落してしまったり…などがあります。
こうしたトラブルを予防するには、歯科医院での定期的なメインテナンスと、高いレベルのセルフケアが欠かせません。
インプラントを長持ちさせるために大切なことを今回は一緒におさらいしていきましょう!!
さて、失った歯にインプラント治療を受けた方へ質問です。
インプラント治療を受けたその後も歯科医院への定期検診を続けていらっしゃいますか?
歯科ではインプラント治療を行う時に、『治療後もメンテナンス(定期検診)に欠かさず通って頂く』ように説明をしています。
しかし、治療後何年も経っていくと『痛みが無い』『違和感がない』『行かなくても困っていない』とだんだんと歯科医院の定期検診へ足が向かなくなってしまう方も少なくありません。
実際、国民生活センターが行った調査では、治療を受けた500人中40%弱の方が途中でメインテナンスに通わなくなってしまっているのだそうです。
インプラントは、噛むところから歯の根っこに当たる部分まで全て人工物です。
ですので、インプラント自体は細菌に強いです。しかし、インプラントが埋まっている周りの歯茎は別で、天然歯(自分の歯)と同じように、歯周病(インプラント歯周炎)になる恐れがあります。
また、噛む力を受け止めるうちに、ネジが緩んだり人工歯が抜けてしまったり、インプラント自体がダメージを受けている場合もあります。
患者様が『あれ?』と異常を感じてから歯科医院へご来院頂いても、対応が難しいこともしばしばあり、悪化すればインプラント自体が抜けてしまう事にもなりかねません。
『痛みが無いからいいか』はとてもキケンなのです。
■インプラントと天然歯(自分の歯)は何が違うのか?
失ってしまった自分の歯と遜色ないほどの『しっかり噛める力』を取り戻せるインプラントですが、いくつか弱点もあります。
①繊維のバリアが存在しない!
え?どういう事?ですよね。
天然歯では、歯茎の内部に線維(糸状の長い組織)が伸びていて、歯と密接に絡みついています。
これは、歯と歯茎の付着を強化したり、体内への細菌の侵入を防ぐバリアの役目も担います。
歯を失うと、この線維の多くもいっしょに失われてしまいます。
ですので、インプラント周りの歯茎は細菌に弱く、『歯周病』になりやすいのです。
②歯根膜のクッションが存在しない!
またまた、え?なに?ですよね。
天然歯には、歯の根とあごの骨の間に「歯根膜」と言う組織があります。
厚さ0.5mmにも満たないごく薄い組織ですが、伸び縮みする無数の線維が歯の根とあごの骨を強固に結びつけています。
いわば歯の根とあごの骨の間にあるクッションのようなもので、噛んだときにさまざまな方向から生じる力を吸収・分散させて、過剰な力が骨に加わらないようにしています。
また、噛んだときに硬さや感触をセンサーのように感知して、無意識のうちに噛む力を調節する機能もあるスゴイ組織なのです。
一方インプラントは、人工歯根(インプラント体)のチタンとあごの骨が直接結合しています。
クッションやセンサーの働きをする歯根膜が存在しないため、その分過剰な噛むカの負担によるトラプルが起きやすいのです。
■インプラント歯周炎の進行
さて、ではインプラントの歯周病【インプラント歯周炎】はどのように進行して行くのでしょうか。
天然歯に起こる歯周病と、インプラントに起こる歯周病。
どちらも犯人はプラーク(歯垢=細菌のかたまり)なのは変わりありません。
歯周病は歯の根元まわりに付着した細菌が、まず歯茎を炎症させて腫れや出血を起こします。
いわゆる「歯肉炎」ですね。
これが悪化すると、『歯周炎=歯周病』あごの骨が溶けてなくなる!!
実際はからだの防御反応で吸収されているのですが・・・。
結果、歯が抜け落ちてしまいます。
インプラントの歯周病も、進行のしかたは似ています。
インプラントに付着したプラークがその周りの歯茎を炎症させて、腫れや出血を起こします。
これを専門的に言うと「インプラント周囲粘膜炎」と言います。
そして悪化すると、あごの骨にも炎症が及ぶインプラントの歯周病=「インプラント周囲炎」となります。この周囲炎が進むと、骨が失われて、インプラントは抜けてしまうのです。
あごの骨が失われる点は共通していますが、天然歯の歯周病では、実は炎症は骨には及んでいないのです。炎症と骨の間には常に歯茎があって、骨の消失にあわせて歯茎も下がっていきます。
しかし、インプラント周囲炎では、骨の内部に細菌が入り込み炎症が起きています。
いわば骨炎や骨髄炎と同じです。ですから周囲炎は、インプラントを失いかねないだけでなく、体にもより危険な状態といえるのです。
■噛む力とインプラントの関係
インプラントを長持ちさせるには、過剰な噛む力ヘの配慮も見過ごせません。
「噛む力」と言っても、ガリッと一時的に強く噛んでしまったという事よりも、歯ぎしりや食いしばりといった、無意識に生じる継続的な強い力が問題となるのです。
先ほどもお話ししたように、インプラントとあごの骨の間には、噛む力を吸収・分散させるクッションとなる歯根膜がありません。
そのため、過剰な力が生じた場合、インプラントや骨にダイレクトに負担がかかります。その結果、人工歯部分(上部構造)が欠けたり割れたり、土台となる連結パーツ(アバットメント)がゆるんだりゆがんだり…
人工歯根(インプラント体)とあごの骨が剥離し、インプラントが抜けてしまうこともまれにあります。
それに加えてインプラント周囲炎も、歯ぎしりなどにより悪化するおそれがあります。
強い力がインプラントを支える骨に加わり続けることであごの骨の破壊が加速してしまうのです。
ちなみに、天然歯でも歯ぎしりなどにより歯周病が悪化することがあります。
歯ぎしりや食いしばりは無意識の癖ですので、患者さんは自覚していないことがほとんどですが、歯科では、噛み合わせや、上下の歯やインプラントの状態を調べることで、絶えずそうした癖の兆候に目を光らせています。
兆候が見つかった場合は、噛み合わせの調整やナイトガード(就寝時に入れるマウスピース)などで力の緩和を図ります。
■メインテナンスの内容
メインテナンスでは、インプラントとその周りの歯茎やあごの骨の状態を複数の検査で調べます。
なかでも重要視されるのが、インプラントと歯茎のあいだに器具を挿し込んだときに「出血」するかどうかなのです。
出血したなら、インプラントの根元に付着した細菌が歯ぐきで炎症を起こしています。
炎症は歯茎だけなのか?(¬=インプラント周囲粘膜炎)
あごの骨に及んでいないか?(=インプラント周囲炎)
をレントゲンなどでさらに精査していきます。
もし周囲炎や、その前段階の周囲粘膜炎になっていることがわかったら、まずは患者さんにセルフケアを見直していただきます。
患者さんのケアの仕方がそのままでは、治療をしても細菌は減らず炎症も引いいてくれません。
改善されたら、歯ブラシなどでは届かない、歯茎の中のプラークや歯石を専用の器具で取り除きます。
周囲炎の場合は、これに加えて、細菌に汚染された歯茎の組織やあごの骨も除去します。
細菌の温床がなくなれば、あごの骨がインプラントに再結合する見込みが高まります。
周囲粘膜炎の段階で発見できれば元に戻せますし、周囲炎になっていても、あごの骨のダメージが少ない状態ほどインプラントを失わずに済む可能性が高まります。
歯周病と同じで、痛みや違和感に気付いてからでは、既に進行していることが多いです。
ですから、欠かさずにメインテナンスに来院していただきたいのです。
インプラント治療を考えておられる方、既にインプラント治療を受けられた方、ご不安な事があればご相談ください。
当院の待合室には、歯科関連の情報誌としてnicoを置いておりますので、待ち時間の合間に是非ご覧頂ければと思います。
何かご不明な点があればお気軽にスタッフまでご質問下さい。